陸自妻的官舎ノ日々

特に役にもたたない自衛隊や官舎の話をつらつら綴っています。

概ね右へならえ

最近、我が家でお気に入りのフレーズがある。

それは、「概ね右」。
正式には「概ね右に入れるを可とす」であり、二者択一を迫られる場面で使う。

このフレーズ、元ネタは何かというと、旧軍における服装の統制である。
しかも、パンツの中のチ○ポジの話である。

旧軍の支給品が越中褌からパンツ(トランクスみたいな感じ?)に変わったときに言われたことらしい。
しかし、何かにつけて統制統制とうるさい軍隊(自衛隊もだけど)において、《概ね》右を《可とす》というのは、とてもふわっとした表現なのでは?と思った。
そのことを夫に伝えると「つまり、どっちでもいいけど迷ったら右に入れとけ」ということらしい。
女の身ではいまいち実感しにくいけれど。

しかし、このフレーズ、出典が定かでない。
それどころか、ネットで「旧軍 トランクス」や、「旧軍 チ○ポジ」などの言葉で検索しても、まったくヒットしないのである。

夫に聞く前から、「旧軍ではチ○ポジも統制されていた」という話を聞いたことがあるような気もしたけれど、それが右だったか左だったかはわからない。
これだけネットであらゆる情報が網羅できる時代に、こんなに調べてもヒットしないってことは、夫が勝手に言っているだけでは…?という疑念さえわいてくる。
だれか、正しい情報を知っていたら教えて欲しいくらいである。
それによっては、我が家の選択肢が「概ね左」になるかもしれない。

フト思ったけれど「概ね右」なのはチ○ポジではなく夫の思想では…?
なんてね。

情報保全の話

1月某日、夕食の席で夫が言った。

「そういえば、上級部隊から『SNSに自分の所属とか、防大○期とか生徒○期って書くな』って通達がきたよ」

えっ、今さら?と思った。

自衛官は、職業柄、情報保全については教育を受けているし、点検もある。
ただし「職場の情報を持ち出さない」という部分に関しては厳しくても、「情報を流出させない隊員の意識づくり」に関してはまだ甘い気がする。
なぜなら、Twitterでちょっと検索をかければ、本名・駐屯地名・顔出し写真を載せている自衛官がたくさんいるからだ。
中には未成年の飲酒や喫煙が疑われるようはものもあって、情報保全とは別の部分に引っ掛かるのではないかと心配してしまう。

海上自衛官は、SNSの利用そのものを制限されるという話を聞いたことがある。
SNSへの投稿頻度やパターンから、航海の日程が割り出されてしまう恐れがあるからだという。
素人目にはわからなくても、見る人が見たら情報の欠片を繋ぎ合わせて大きいものが見えてくるってことなんだろう。

私もTwitterをしているのだけれど、自衛官妻という肩書きを出してしている以上、うっかり私が情報流出源になってしまわないよう気を付けている。
官品や糧食の写真、訓練の日程や内容など、基本的に夫が注意していることと同じことを注意している。
ちなみに、限定公開機能は最初から信用していない。
限定公開にしたところでブロックできるのは初見の人間の目くらいで、一度ネット上に上げた情報を完全に回収することは不可能だからだ。
逆に、限定公開にしているから安心だと思っている人の方が危険かもしれない。

知人の自衛官に「(自衛隊とは関係ないけれど)ネット上にアップしてはいけない写真」をブログに上げている人がいた。
しかし、それを本人に忠告したところ「限定公開にしているから大丈夫」との認識だった。
その人の頭の中には「誰かがスクリーンショットを撮って二次的に広める可能性」がなかったのだ。
幹部自衛官でさえそういう認識であることに、心配半分、呆れ半分だった。


途中から、自衛隊と関係なく「SNSを利用する上での心構え」みたいな話になってしまったけれど、なぜ私がこんなにSNSを警戒しているかというと、私が子供の頃は「ネット上で本名を出すなんてとんでもない」と教えられていたからだ。

私は現在20代後半。初めてインターネットに触れたのは、小学校の高学年だった。(もちろん家族共有のパソコンから、親の監督のもと)
その頃はまだ、インターネットとはいろんな人が有象無象に入り乱れる匿名の世界という認識だった。
数年経って前略プロフィールが流行ったときも、本名をフルネームで載せる人はまだ多くなかったように思う。
けれど、mixiを経てFacebookが広まり、インターネットは「現実の生活の続き」という感覚が強まってきた。
更にそこにTwitterという拡散性に特化したSNSがあって、今の若い人は、素顔や本名を明かしたまま「友達とするような会話」を全世界に公開することに躊躇いを感じなくなっているように思う。
それって本当は結構危険なんだよ、と言っても、ネットに触れ始めたときから「そう」だから、危機感を感じないのかもしれない。

でも、国防に携わる人がそういう認識では困るはず。
今、本名や所属をプロフィールに書いて「訓練きつかったー」と写真つきでネットにアップしている人たちは、いつそれに気づくんだろう?


…なんて、今回はなんだかお説教ぽくなってしまいました。

自衛官の朝

自衛官の朝は早い。

…と言ってはみたけれど、実はそんなことなはい。
うちの夫は6時半くらいに出勤している。
6時半に家を出て6時40分には職場に着くことを考えると早いような気もするが、家を出る時間としては東京近郊から都内にお勤めに出るサラリーマンの方々とそんなに変わらないと思う。

ただし、変則的に朝早く家を出ることもある。
射撃訓練があるから5時半とか。
演習だから5時とか。
さすがにそういう日はお弁当はないのだけれど、朝ごはん用におにぎりを作ってあげるので結局妻も早起きする羽目になるのである。
何か行事があると3時とか4時に出勤することもあるらしいが、私はまだ体験していない。

ちなみに、そのスケジュールは夫しか知らない。
夫が申告してくなければ、どんなに早起きしたところでご飯が炊ける時間は普段通りである。
そしてつい先日、結婚して初めての申告漏れがあった。
というか、その日は早く出勤するということを夫本人も忘れていたのである。
早朝、夫婦でスヤスヤ眠っていると電話がかかってきた。
なんと、その日は隣県の駐屯地まで行く予定だったという。
集合時間ギリギリになっても現れない夫に、同僚の方が連絡してくれたのだ。
電話で飛び起きた夫は5分で洗顔と着替えを済ませ、ホット甘酒を流し込んで家を出ていった。
というか、職場まで私が車で送った。
後には、夫のお弁当と朝ごはんになるはずだった1.5合のご飯が残されたのであった。

私は、結婚するまで5年ほどフルタイムで働いていたのだけれど、1度だけ寝坊したことがある。
しかも、その1度が、絶対に遅刻してはいけない日だった。
なぜか遅刻してはいけない日に限って寝坊するんだよね、とその日の夜夫と話した。
夫は、うんうんと頷きながら言った。

「わかる。俺、こんなに寝坊したのなんて×年ぶりだったよ」

「×年前は何の時に寝坊したの?」

「……中央観閲式」

×年前のその日、夫はエクストリーム登庁で遅刻こそ免れたものの「死ぬかと思った」という。
結婚したからには、寝坊ごときで寿命を縮められては困るので、しっかりスケジュールと目覚まし時計の管理をしてもらいたいと思う。

自衛官へのプレゼント選び

先日、ショッピングモールへ行ったら、街路樹にイルミネーションが点灯しクリスマスツリーが飾られていた。
ハロウィンが終わってから、街がどんどんクリスマス仕様になっていく。
気づけばクリスマスまであと1ヶ月。
ここからクリスマスまでは、一年で一番ワクワクする季節かもしれない。

となれば、そろそろクリスマスプレゼントを考えなくてはならない。
しかもうちの夫の場合、誕生日とクリスマスが近いので絶対に外せないイベントである。

夫と付き合い始めてから、プレゼントには毎年悩まされてきた。
男性へのプレゼントというと、ネクタイや名刺入れなどの仕事で使える小物が贈りやすくて良いのだが、自衛官相手だと封じられてしまうことが多い。
ネクタイは締めないし名刺も持たない。
万年筆や高級ボールペン…デスクワークじゃないので猫に小判。
腕時計は、仕事中はG-shock一択だし、既に持っている。(自衛官G-shock率はとても高い)
仕事で使えるものを贈りたいなら、もはや「戦人」から選ぶしかない…

しかも夫はこだわりが強く、手帳は○○がいいとか、ステレオは××の機能がついてないと嫌だとかいう好みがハッキリしているので、下手なものを贈るとお蔵入りの可能性もある。
そんな訳で、去年から夫には直接欲しいものを聞いている。
去年は「財布」との返事をいただき、メーカーと型番まで指定して…というか、Amazonのページをメールで転送してもらった。
ワクワク感は一切ないが、相手が欲しいものを贈るという点では最も失敗がない方法だ。
今年も聞いてみたのだが、答えは「最近物欲がなかて…」だった。
携帯音楽プレーヤーなどいくつか提案してみたのだが、どれも心に響かなかったらしい。
唯一反応したのが「ドライブレコーダー」だった。
夫よ、本当にそれでいいの…?

「ちゃんと欲しいもの言ってくれなかったら肩叩き券にするよ!」と繰り返し言っていたら、ようやく「ランニングシューズ」との答えをいただいた。
しかし「誕生日の2週間前には欲しい」とのこと。
理由は「持続走の記録会で履きたいから」だそうだが…2週間前かぁ…

相手が欲しいものを、相手にとってベストなタイミングで贈る。
これこそプレゼントの極意だとは思うのだけれど、何となく釈然としない思いが残ってしまう私は、まだまだ「贈る側」のエゴに囚われているということなのだろう。

自衛隊染まってる度チェック

自衛隊って、いろいろ独特だと思う。
付き合いはじめの頃はいちいち違和感を感じていたのだが、今となっては単語などは自分も使ってしまうくらい。
そんな、非自衛官の人にチェックしてみてほしい項目を挙げてみた。


・「飲み会」ではなく「宴会」

・「ランニング」ではなく「駆け足」

・「ヘルメット」ではなく「ライナー」もしくは「中帽」

・「革靴」ではなく「短靴」

・「スコップ」「シャベル」ではなく「エンピ」

・「普通科」といえば歩兵のこと

・発音アクセントは「ふ→つう→か→」ではなく「ふ→つう↑か↓」

・白手袋を「シロテ」と略する

・「1200集合」とあったら正午集合

・↑の読み方は「ヒトニーマルマル」

・「ぶたい」と言われて真っ先に変換される漢字は「部隊」

・「OD」がどんな色かわかる

・おっさんが「学生」でも普通

・「赤いきつね」「緑のたぬき」が何のことかわかる

・「気を付け」の時の手はグー

・挙手の手もグー

・歩き出しの一歩目は左足

・「イチ・イチ・イチニー」\ソーレ!/

・「ジュージャン」が何のことかわかる

・「アイジャン」もある

・駐屯地の外を「シャバ」と呼ぶ

・「花金」という言葉を普通に使う


如何だろうか。

ちなみに私は、雨の日に出勤する夫に「カバンに防水処置しなくていいの?」と声をかけたら「君も立派な自衛官の嫁だ」と言われたことがある。
咄嗟に「防水"処置"」という単語が出てくるところが、自衛隊に染まっているのだろうな、と思う。
(そして透明のゴミ袋を渡しました)

営内・営外の話

先日、「私服自衛官の見分け方(若者編)」というテーマで記事を書いたが、実はあれは(若者編)というより(営内者編)というほうが正解である。

単に、営内者には若い人が多いので(若者編)というタイトルにした。

 

陸曹以下の自衛官は、基本的に営内に居住することが定められている。

つまり、自衛隊的には営外に住むほうが「例外」であり、条件を満たした人でなければ営外に住むことはできない。

では、営外に住むための条件とは何か。それは、以下の2つである。

 

①結婚していること

②30歳以上で2曹以上の階級であること

 

このどちらかを満たせば営外居住できる。

早く営内を出たくて結婚したがる人もいれば、②の条件を満たしていたも営内のほうがお金がかからないからという理由で営内に留まる人もいる。

 

ちなみに、私はこの情報のおかげで合コン相手の自衛官の嘘を見抜いたことがある。

夫と出会う前、初めて自衛官と合コンしたときのことだった。

合コン中、話の流れで「官舎住まいですか?」と問いかけた私にその人は「はい」と答えた。

その相手は、20代で3曹だった。

こちらが何も知らないと思って油断したのだろうか…

 

それにしても、営内者と付き合うのは女性側にも我慢を強いられるので大変だと思う。

うちの夫は知り合った時から営外居住だったけれど、結婚する前、入校で一時的に営内生活になったことがある。

その間は金曜日以外の平日は会えなかったし、週末でも「門限が…」とか「残留が…」とか、いろいろ制約があった。

誕生日なのに独りぼっちで過ごすことを余儀なくされた時は本当に寂しかった。

前の年にスッポかされたから、今年こそは一緒に過ごそうって言ってたのに…。

その時夫は「入校中で営内なんだから仕方ない」と言った。

それに対して私は「入校してるのはアンタの都合だろ!知るか!最大限の誠意を見せやがれ!」とキレた。

今思えば無茶な要求である。

ちなみに、電話で喧嘩していたのだが、話の途中で「もうすぐ点呼だから」と言って切られた。

営内者が相手だと、喧嘩さえも自分たちのペースではできないのだった。

はじめての官舎点検

官舎に住んでいると、定期的に防火点検がある。

消火器は設置してあるか、ガス栓は劣化していないか、火災報知器は正常に作動するか、ベランダの避難経路は確保できているか…などを、業務隊の自衛官がやってきて住人立会いの下で家中の部屋を点検するという。

私は先日初めてこれを体験したのだが、まぁなかなか大変だった。

 

我が家は3LDKなのだが、そのうち2部屋はほとんど使っていない。

空き部屋①は引っ越してきた当時の空段ボールが山積みに重なり、空き部屋②は私が帰省した際のスーツケースや夫の演習グッズが展開されたままだ。

今回、点検を受けるにあたっては、それらを片付けなければならない。

休日を使って大物を片付けて、ごみはごみの日にまとめて出した。それ以外は押し入れに隠した。

 

そして点検の当日。

朝からすべての部屋を再度確認し、精力増強サプリや抱き枕代わりにしているぬいぐるみなど「他人様に見られるのはちょっと…」というグッズを押し入れに隠す。

他人目線で家の中を見回すと、意外とヘンなものが出しっぱなしになっていたりするものだ。

家中の床に掃除機をかけ、「そういえばトイレも見られるかも」と夫が言うのでトイレやら洗面台やらの水回りもぜんぶ掃除。

そういえば、ガス栓も見られるんじゃん!と思い出し、ガス台も掃除。

なんかもう、子供の担任の家庭訪問を受ける親の気分だ。

いや、家庭訪問だったらガス台なんて見られないから、多分それよりも掃除している。

でも、事前のお知らせでは前の世帯と30分間を開けて点検する時程になっているので、結構細部まで見られるのではと予測したのだ。

 

ようやく満足いくまで一通り掃除を終え、一息ついていると夫から電話が。

「ガス代の下の物入れに消火器スプレーが入っているから、それをこれ見よがしに目につくところに出しておいて」

ふふ、勿論ですとも。消火器スプレーの存在は掌握しておりましたよ。

そして、消火器スプレーを取り出し、何気なく品質保証期限に目をやると…

切れてる!!5年も前に!!!

 

私「なにこれ!?5年も前に切れてるけどどういうこと!?前の官舎から持ってきたんじゃないの!?」

夫「え、マジで?それね~入居したときから置いてあったんだよね。前の住人が、期限切れだから置いていったのかなあ」

 

「置いていったのかなあ」て…この時点で、点検まであと20分。

ホームセンターまで買いに行く暇はない。

夫曰く「買いなおしますって言えば大丈夫だよ。業務隊の人も、自衛官じゃない奥さんにそんな怖く言ったりしないと思うから」。

(夫はこんな呑気に言っているが、本来は自衛隊内で「点検」というと厳しくて大変なのだ。)

 

ここまできたらもう諦めるしかない。私にできることは全てした。

ドキドキしていると、ついに業務隊の人が点検にやってきた。夫以外では久々に会話する戦闘服姿の自衛官だ。

係の人がチェックリストに従って点検していく。

 

業「まず、消火器は置いてありますか?」

 

早速きたーーー!

 

私「はい。…あの、スイマセン、消火器はあるんですけど期限がきれてて…」

業「あーそうですか。じゃあ、新しいの買っといてください。次に、ガス栓は…でも、入居したばっかりだから新しいし大丈夫ですよね」

 

えっ、見ないの?せっかくガス台掃除したのに…

 

その後、ベランダの避難経路やエアコンの室外機の設置場所などを目視で確認。

和室の火災報知器だけ動作確認し、その他官舎の注意事項などを伝達し、ものの10分もかからず帰っていった。

 

えっ、見ないの??あっちの部屋にも火災報知器あるよ?

 

もしかして、明らかに使っていない部屋だから見なかったのかも…

結局、気合を入れた割に点検はアッサリ終わった。

業務隊の人も、もっとイカツくて顔が怖い人を想像していたが、とても優しくて腰が低い人だった。

私は拍子抜けしたが、部屋がきれいになったので夫は喜んだ。

今後はなるべく常に部屋をきれいに保ち、突然点検があっても(突然点検なんてないけど)慌てずに対処したいと思う。